ファミリーバイク特約は、任意保険の自動車保険のオプション契約として加入できる特約です。
バイク保険と比べて保険料がリーズナブルなうえ、補償を受けられる原付バイクの台数に制限がないといったメリットがあります。そのため、原付バイクのユーザーのなかにはバイク保険の存在が気になりつつも、加入を検討している方も少なくありません。
そうしたニーズを踏まえ、本記事では、ファミリーバイク特約とバイク保険の補償内容やメリット・デメリットを徹底比較します。ファミリーバイク特約とバイク保険がおすすめなケースについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
この記事の要約
- ファミリーバイク特約は、自家用の自動車や二輪を保有している場合に、主たる契約にあたる自動車保険のオプションとして付加できる契約
- ファミリーバイク特約には、自動車保険の年齢制限の影響を受けなかったり、保険を使っても自動車保険の等級が下がらなかったりするメリットがある
- 複数台の原付バイクを保有している場合はファミリーバイク特約がおすすめ
- 保険料を抑える観点から、未成年の子どもが原付バイクに乗っている場合も、ファミリーバイク特約がおすすめ
ファミリーバイク特約とは?
ファミリーバイク特約は、自家用の自動車や二輪を保有している場合に、主たる契約にあたる自動車保険のオプションとして付加できる契約です。
具体的には、配偶者や同居の親族、別居の未婚の子どもが原動機付自転車(原付バイク)を使用中に他人をケガさせたり、他人の物を破損させたりした場合に補償を受けられます。
ただ、ファミリーバイク特約は任意保険の自動車保険に付帯できる特約のため、単独で加入できません。
ファミリーバイク特約の対象
ファミリーバイク特約の対象となる自動車は、原付バイクです。道路運送車両法で定める「原動機付自転車」は次の車両を指し、電動キックボードやミニカー(四輪)を含みます。
ファミリーバイク特約の対象者種
- 原動機の総排気量が125cc以下または定格出力(安定して出力できる最大の電力量)1キロワット以下の二輪車
- 原動機の総排気量が50cc以下または定格出力が0.6キロワット以下の側車付二輪または二輪以外の車両
なお、道路運送車両の保安基準(1951年運輸省令第67号)に基づき、原動機付自転車は、電動機の定格出力が0.6キロワット以下で長さ1.9m、幅0.6m以下かつ最高速度20km以下の特定小型原動機付自転車と、それ以外の一般原動機付自転車に分類されます。
ファミリーバイク特約の補償対象者
ファミリーバイク特約の補償対象者は次のとおりです。
- 記名被保険者(本人)
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者と配偶者の同居の家族
- 記名被保険者と配偶者の別居の未婚の子ども
上記のとおり、ファミリーバイク特約は本人(記名被保険者)だけでなく、配偶者や同居の家族、別居の未婚の子どもまで補償対象です。
自動車保険に30歳以上といった運転者年齢条件や、「本人に限る」といった運転者制限が課されている場合でも、補償対象者は、原付バイクの使用中に起こした事故について、すべて補償されます。補償される事故には、本人や家族が他人から借りた原付バイクで起こした事故も含まれます。
自損事故タイプと人身傷害タイプの補償内容
ファミリーバイク特約は、自損事故タイプと人身事故タイプの2種類があります。加入時に選択可能です。
自損事故タイプは、相手方が存在しない自損事故(単独事故)を対象に補償される保険タイプです。相手方が存在する事故は補償されないため、人身事故タイプと比べて保険料が安いのが特徴です。
ただし、相手方が存在する事故でも相手が任意保険に無加入だった場合など、相手方から保険の補償を受けられないケースでは、例外的に補償される可能性があります。
一方、人身事故タイプは、自損事故だけでなく、相手方が存在する事故についても補償される保険タイプです。同乗者がいる場合は、同乗者のケガも補償されます。補償範囲が広い分、自損事故タイプと比べて保険料が高いのが特徴です。
自損事故タイプと人身事故タイプの補償内容を表にまとめると、次のとおりです。
相手方への賠償 | 自分のケガへの補償 | |||
---|---|---|---|---|
対人賠償 | 対物賠償 | 相手方が存在する事故 |
自損事故 (単独事故) | |
自損事故タイプ | ◯ | ◯ | △* | ◯ |
人身事故タイプ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
*相手方から保険の補償を受けられないケースでは、補償される可能性あり
ファミリーバイク特約のメリット
ファミリーバイク特約には、次のようなメリットがあります。
- 自動車保険の年齢制限の影響を受けない
- バイク保険よりも保険料を安くできる可能性がある
- 保険を使っても自動車保険の等級が下がらない
- 一つの特約で家族全員分の原付バイクをカバーできる
これらのメリットの把握は、ファミリーバイク特約の加入を検討するうえで重要です。ぜひ参考にしてください。
自動車保険の年齢制限の影響を受けない
ファミリーバイク特約は、自動車保険に課される年齢制限を受けません。そのため、本人が自動車保険にセットでファミリーバイク特約に加入していれば、本人の家族は年齢に関係なく補償を受けられます。
これは、補償する運転者の範囲を年齢で区切ることで、保険料の割引を受けられる年齢条件を設ける自動車保険との大きな違いです。実際、多くの損害保険会社は、「21歳以上補償」「26歳以上」といった具合に、同居家族に年齢条件を設けることで、補償する運転者の範囲を年齢で限定しています。
自動車保険に対し、ファミリーバイク特約は年齢条件がありません。10代の家族や本人以外の家族も補償の対象になるため、手軽に原付バイクでの事故に備えられます。
バイク保険よりも保険料を安くできる可能性がある
ファミリーバイク特約は任意保険のバイク保険よりも安くできる可能性があります。
実際、原付バイクを対象にしたバイク保険料の相場は1万7,850円なのに対し、ファミリーバイク特約の相場は自損事故タイプで約8,000円、人身事故タイプで約2万円です。つまり、原付バイクの保有台数が1台の場合、自損事故タイプを選べば、保険料がバイク保険を選んだときよりも安くなります。
ただし、原付バイクを複数台保有している場合は人身事故タイプを選んでも、保険料がバイク保険を選んだときよりも安くなる可能性があります。ファミリーバイク特約はバイクの台数制限がないためです。
このように、ファミリーバイク特約は原付バイクの保険料を安く抑えたい方にとって最適な契約サービスだといえるでしょう。
保険を使っても自動車保険の等級が下がらない
ファミリーバイク特約は保険を使っても自動車保険の等級が下がりません。原付バイクでの事故は主契約である自動車保険でノーカウント事故として扱われるためです。
ファミリーバイク特約に対し、バイク保険は事故や災害で保険を使うと翌年度の等級が下がり、保険料が割増されます。保険料を使った後の経済的負担に鑑みると、ファミリーバイク特約を付けるメリットは大きいといえるでしょう。
一つの特約で家族全員分の原付バイクをカバーできる
ファミリーバイク特約は原付バイクの台数制限がないため、一つの特約で家族全員分の原付バイクをカバーできます。
そのため、妻が1台、別居する大学生の子どもが1台といった具合に家族内で複数人が複数台の原付バイクに乗る場合でも、父が自動車保険でファミリーバイク特約を付帯すれば、家族全員分をカバー可能です。
ファミリーバイク特約のデメリット
メリットの裏腹で、ファミリーバイク特約には、次のようなデメリットがあります。
- 単独で加入できない
- ロードサービスが付帯しない
- 優良ドライバーが長時間利用する場合は割高になる
- 車両保険がない
原付バイクの利用にあたって安全性や割安感を重視される方は、特にこれらのデメリットが気になるかもしれません。ぜひご留意ください。
単独で加入できない
ファミリーバイク特約は主たる契約である自動車保険に付帯した特約であるため、単独で加入できません。
裏を返せば、自動車保険を解約する場合には、ファミリーバイク特約も一緒に解約されてしまうというわけです。そのため、自動車保険を乗り換えする場合は、新しい自動車保険でファミリーバイク特約に加入し直すか、別途バイク保険に加入する必要があります。
ロードサービスが付帯しない
ファミリーバイク特約には、基本的に事故車両の搬送や応急作業をしてくれるロードサービスが付帯していません。そのため、万が一、事故や不具合により原付バイクが動かなくなった場合は、故障した原付バイクを自力で移動させるか、整備する必要があります。
ファミリーバイク特約に対し、バイク保険はロードサービスが付帯しているのが一般的です。たとえば、三井ダイレクト損保は、バイク保険の付帯サービスとして、レッカーサービスや緊急帰宅費用サービスなどが付いたロードサービスを提供しています。
ロードサービスは利用頻度が低いとはいえ、便利なサービスです。もし原付バイクで遠出する機会が多かったり、通勤・通学の距離が長かったりする方は、ロードサービスが付帯したバイク保険に加入しておいた方がよいかもしれません。
優良ドライバーが長期間利用する場合は割高になる
ファミリーバイク特約は優良ドライバーが長期間利用する場合に割高になる可能性があります。等級制度がなく保険料が一定であることから、ファミリーバイク特約の保険料がゆくゆくはバイク保険料の保険料を逆転してしまうためです。
しかし、バイク保険の保険料がファミリーバイク特約の自損事故タイプの保険料を下回るには、少なくとも十数年間無事故を維持する必要があります。一人のドライバーが十数年にわたって無事故を維持するのは、現実的ではありません。そのため、ファミリーバイク特約が割高になるデメリットは、数あるデメリットのなかでも実現しにくいといえるかもしれません。
車両保険がない
ファミリーバイク特約はバイク保険と違い、自分のバイクの修理費を補償する車両保険がありません。そのため、ファミリーバイク特約の契約者は事故時に相手がいるかどうかにかかわらず、自分の原付バイクの修理費を自腹でまかなう必要があります。
事故時の原付バイクの修理費は普通二輪や大型二輪と比べて少ないとはいえ、負担が決して小さいわけではありません。修理費負担の大きさを踏まえ、修理費が家計を圧迫する可能性がある場合は車両保険が付いたバイク保険に加入するとよいでしょう。
ファミリーバイク特約とバイク保険、自賠責保険の違い
ここからは、ファミリーバイク特約と任意加入のバイク保険、強制加入のバイク自賠責保険の補償内容や、メリット・デメリットの違いについて解説します。
補償内容の違い
種別 | ファミリーバイク特約 | バイク保険 | 自賠責保険 | |
---|---|---|---|---|
加入 | 任意 | 任意 | 強制 | |
補償内容 | 対人 | 基本は無制限 | 基本は無制限 | 死亡3,000万円 後遺障害4,000万円 ケガ120万円 |
対物 | 任意設定 | 500万円〜無制限で選択 | なし | |
搭乗者傷害 | オプションによって加入できる場合あり | あり | なし | |
自損事故 | オプションによって加入できる場合あり | 死亡1,500万円 後遺障害50万円〜2,000万円 介護200万円 | なし | |
ロードサービス | 基本的にはなし | 基本的にはあり | なし | |
排気量区分 | 125cc以下 | なし | なし | |
対象車 | 制限なし | 契約による | 契約車のみ | |
年齢制限 | なし | 契約による | なし | |
等級制度 | なし | あり | なし |
補償内容をみると、事故で他人を死傷させてしまった場合に備える対人賠償保険は、バイク保険が最も手厚いことがわかります。自損事故に対する保険はバイク保険も充実していますが、ファミリーバイク特約でも人身事故タイプで自損事故に対する補償があるのは、上述したとおりです。
ロードサービスについてはバイク保険が基本的に付帯されているのに対し、ファミリーバイク特約は基本的に対象外です。
メリット・デメリットの違い
ファミリーバイク特約とバイク保険、自賠責保険のそれぞれのメリット・デメリットは次のとおりです。
ファミリーバイク特約 | バイク保険 | 自賠責保険 | |
---|---|---|---|
基本的補償範囲 | 相手の死傷 相手の損壊 契約によって自分の 死傷も補償対象 | 相手の死傷 相手の損壊 自分の死傷 自分の損壊 | 相手の死傷 |
メリット |
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デメリット |
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ファミリーバイク特約とバイク保険、自賠責保険を分ける違いは補償範囲です。実際、ファミリーバイク特約は人身事故タイプに加入しない限り、対物賠償保険までしか補償されません。また、自賠責保険は、基本的に対人賠償保険しか補償されないため、補償内容として十分とはいえません。
一方、バイク保険は車両保険も付帯しているため、相手の死傷や損壊だけでなく、自分の死傷や損壊も補償してもらえます。ただし、1つの保険契約で家族全員分の原付バイクを網羅できないため、複数台の二輪を保有している場合はデメリットが顕在化してくるでしょう。
ファミリーバイク特約とバイク保険、どっちがおすすめ?
最後に、ファミリーバイク特約とバイク保険がおすすめなケースについてそれぞれ解説します。
ファミリーバイク特約をおすすめするケース
自動車保険に加入しており、複数台の原付バイクを保有している場合は、ファミリーバイク特約をおすすめします。ファミリーバイク特約には原付バイクの台数制限がなく、一定の金額で補償を受けられるためです。
また、未成年の子どもが原付バイクに乗っている場合も、ファミリーバイク特約がおすすめです。バイク保険では未成年の子どもを記名被保険者にすると、保険料が割高になってしまうためです。
以上をまとめると、保険料を割安にしたい場合は、ファミリーバイク特約がおすすめだといえます。
バイク保険をおすすめするケース
ファミリーバイク特約は自動車保険とセットで契約するオプション契約であるため、家に自動車がない場合はバイク保険を契約しましょう。
また、原付バイクに長期間乗る予定がある場合は、無事故の期間に反比例して保険料が安くなるバイク保険をおすすめします。バイク保険であれば無事故期間の継続で等級が上がったり、年齢が上がったりすることで保険料が年々安くなるためです。
このほか、車両保険やロードサービスを付帯させたい場合もバイク保険を選ぶとよいでしょう。
まとめ
原付バイクを保有しているならば、ファミリーバイク特約は一度は検討しておきたい特約です。バイク保険と比べて保険料がリーズナブルなうえ、補償を受けられる原付バイクの台数に制限がないといったメリットがあるため、有力な任意保険の選択肢になるでしょう。
ただし、ファミリーバイク特約はバイク保険と違い、車両保険やロードサービスが付帯されていません。長期的に見た場合、バイク保険が割安になる場合もあります。つまり、バイク保険とファミリーバイク特約、どっちが適しているかは人によって異なるため、比較検討したうえで契約するとよいでしょう。