バイクは通学や通勤などの移動手段のほかに、ツーリングをはじめ趣味としても楽しめる乗り物です。一方、多くの人に「バイク=危険」と思われている乗り物でもあります。
実際、バイクが死亡事故や重傷事故に遭う確率はどのくらいなのでしょうか?
本記事では、バイクの事故率を紹介します。バイク事故の原因と対策を解説するので、できる限り安全にバイクに乗りたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
この記事の要約
- バイクの事故率は他の車種と比べ死亡や重傷のリスクが高い。
- 事故の多くは車両相互事故で、交差点での右折時や出会い頭が多い。
- 事故防止対策として、危険予測の運転、スピードの管理、プロテクター着用が必要。
- 事故に備えてバイク保険への加入も推奨されている。
バイクの事故率
危険な乗り物と認識されているバイクですが、事故率は他の車種と比べてどのくらいなのでしょうか?車種別の交通事故での死傷者数のデータをもとに事故率を分析していきます。また、年齢層別や時間帯別による事故率もみていきます。
車種別
自動車 乗車中 | 自動二輪車 乗車中 | 原付 乗車中 | |
---|---|---|---|
死者 | 837 | 391 | 117 |
重傷者 | 7,074 | 4,056 | 2,574 |
軽傷者 | 209,181 | 19,190 | 13,321 |
死傷者数 | 217,092 | 23,637 | 16,012 |
致死率(%) | 0.39 | 1.65 | 0.73 |
重傷率(%) | 3.26 | 17.16 | 16.08 |
「表2-2-11 状態別死者、重傷者、軽傷者数の推移|令和5年中の交通事故の発生状況」(警察庁)をもとに作成
バイクで事故に遭った際は、自動車と比べて死亡・重傷に至る可能性が高くなります。
警察庁の統計によると、交通事故における自動二輪車、原付の致死率はそれぞれ1.65%、0.73%です。自動車事故の致死率0.39%と比べると高い数値であることが分かります。
また、自動二輪車、原付の致死率はそれぞれ17.16%、16.08%であり、自動車事故の重傷率3.26%の約5倍高い数値です。
自動車はシートベルトやエアバックなど事故の被害を最小限に抑える安全対策が施されています。一方、バイクには身体を保護してくれる車体がありません。
バイクで事故に遭った際は、自動車と比べて身体の強打による死亡、重傷に至る可能性が高くなると考えられます。
年齢層別
「表2-3-2 年齢層別・状態別人口10万人当たり死傷者数の推移|令和5年中の交通事故の発生状況」(警察庁)をもとに作成
15〜24歳の若年層の死傷者数は、他の年齢層と比べて死傷者数が多い傾向にあります。運転経験の浅さによる安全確認能力の不足、事故で死亡やケガをするリスクへの甘い見積もりの可能性が考えられます。
実際に、若年層の運転操作不適やわき見運転などの安全運転義務、最高速度違反件数は他の年齢層より多い傾向にあります。
また、若年層に次いで、45〜54歳の年齢層の死傷者数も多くなっています。事故の原因として、動体視力の低下や判断能力の低下など肉体的な老化が挙げられます。とくに、運転経験があり、再びバイクに乗り始める人は、自分の運転技術への過信があるため注意が必要です。
時間帯別
引用:「東京都内の二輪車乗車中の交通事故死者数(発生時間帯別)|二輪車の交通死亡事故統計(2023年中)」警視庁
過去5年平均では、6〜10時、16〜20時の時間帯に死亡事故が多く発生しています。一方、10〜16時や0〜4時の時間帯の死亡事故は他の時間帯と比べ、少ない傾向です。
6〜10時、16〜20時の時間帯は通勤や通学など交通量が多くなる時間帯のため、事故率が多くなっていると考えられます。10〜16時や0〜4時の時間帯は、通勤・通学時間帯と比べ交通量が少なく、事故も少なくなったと思われます。
バイク事故の特徴
バイク事故が発生する原因、事故で亡くなる原因としてどのようなことが挙げられるのでしょうか?この原因を考えるため、事故の状況や被害者がケガした部位の統計データを確認していきます。
事故の状況
引用:「二輪車乗車中の事故類型別死者(R1~R5合計)」 警察庁
バイク事故の約7割は車両相互事故で、相手当事者のほとんどが自動車です。
車両相互事故の原因の内訳を確認すると、右折時、出会い頭、正面衝突の順で多いことが分かります。また、右折時や出会い頭などの交差点での事故は全体の39.3%で、車両相互事故の半数以上を占めています。
引用:「高速道路における二輪車乗車中の事故類型別死者数」警察庁
引用:「高速道路における二輪車乗車中の人的要因別死者数」警察庁
高速道路でのバイク事故では、転倒やガードレールをはじめとした工作物への衝突などの車両単独事故が約7割を占めています。また、高速道路でのバイク事故の要因別死者数をみると、約4割が運転中の操作ミスによるものです。とくに、ハンドル操作ミスの割合が高くなっています。
致命傷部位
「表2-4-2 損傷主部位別・状態別死傷者数|令和5年中の交通事故の発生状況」(警察庁)をもとに作成
バイク事故での死者の損傷主部位(損傷程度が最も重い部位)は、頭部36.8%、胸部32.5%と全体の半数を占めています。
一方、重傷者においては、頭部、胸部が損傷主部位である割合はそれぞれ8.7%、15.4%と全体を占める割合が減少しています。軽傷者の損傷主部位も同様に、頭部、胸部が損傷主部位である割合は減少しています。
以上のデータから、頭部、胸部の損傷は死に至る可能性が高いといえるでしょう。
また、バイク事故で怪我をしやすい部位と必要な保険については次の記事からご確認いただけますので、是非参考にしてみてください。
バイク事故の原因
バイク事故が発生した状況から、事故が起きてしまう原因として3つ挙げられます。
車体が小さい
バイクは自動車と比べて車体が小さく、相手側の判断ミスによる事故につながりやすいといえます。
バイクは車体の小ささから、自動車のドライバーの死角に入りやすいのが特徴です。自動車はバイクの存在に気づきにくいため、右折時をはじめとした事故を起こしやすいといえます。
たとえば、渋滞中の交差点で自動車の左側をすり抜けて直進するバイクは、右折車からは対向車の死角に入るため認識できません。右折車は直進するバイクに気づくのが遅れて、衝突事故が発生すると考えられます。
また、車体の小さいバイクは、相手側から見るとスピードが遅く、バイクとの距離も遠くに感じてしまう傾向にあります。この傾向は自動車が右折のタイミングを見誤り、バイクとの衝突事故につながります。
スピードの出しすぎ
スピードの出しすぎは、カーブでの事故の原因となります。
カーブを曲がるには、速度を落とすことと車体を傾けることが重要です。このとき、スピードが出ているほど車体に遠心力がかかり、カーブを曲がり切れずに大きく膨らみます。車線を大きくはみ出すと、ガードレールや塀、対向車にぶつかってしまうでしょう。
とくに、先が見えないカーブは、道路状況やカーブの大きさが分かりにくいため、十分に減速しましょう。なお、無理に傾けたり、ブレーキをかけすぎたりすると転倒する危険もあるため、注意が必要です。
スピードの出しすぎも交差点での事故につながります。交差点で対向車が右折してきた際、スピードを出していると、危険回避が間に合わなくなります。
危険の予測が不十分
「対向車は曲がってこないだろう」「相手は自分の存在に気づいているはず」などリスクに対して見積もりが甘いと、事故につながります。
バイクは車体が小さいことから、死角に入りやすい傾向にあります。また、相手のドライバーが実際のスピードより遅く感じることも特徴の1つです。これらの特徴を把握せずにバイクを運転すると、事故に遭う危険性が高くなるでしょう。
バイク事故への対策
バイク事故に遭わないため、また、事故の被害を最小限に抑えるためには、以下の3つを意識して運転する必要があります。
危険を予測した運転をする
バイクを運転する際は、常に危険を予測することを心がけましょう。
バイクは車体が小さいため、相手が認識してくれるとは限りません。右折車との衝突事故や左折車の巻き込み事故などは車のドライバーの死角に入り、認識できなかったことが原因の1つです。
また、出会い頭事故に遭わないために、信号のない交差点をはじめ車が進入してくることを前提に減速しましょう。相手のドライバーがバイクに気づかずに進入、衝突事故を起こす可能性があります。
「止まってくれるはず」「相手は自分に気づいているはず」などと自分本位の運転をしないようにしましょう。
スピードを出しすぎない
バイクを運転するときは、スピードを出しすぎないように注意が必要です。
自分の走行技術を過信せず、カーブは安全に曲がり切れる速度で走行しましょう。万が一、曲がり切れなかった場合、対向車との正面衝突、ガードレールへの激突は免れません。また、転倒によりケガをするリスクもあります。
交差点では右折車が進入することを考え、早めの減速が大事です。対向車がバイクの存在を認識できずに曲がってきた際も、速度を落としていれば一時停止により対処可能です。
信号のない交差点では、一時停止標識に気づかず、相手側の車両が侵入してきた場合も、減速により衝突事故を防げるでしょう。
法定速度を超えないことはもちろん、自分の安全に配慮した走行が重要になります。
ヘルメット・プロテクターを着用する
万が一、事故に遭った際に被害を最小限に抑えるため、ヘルメット・プロテクター(胸部)は適切に着用しましょう。
致命傷となる損傷部位のほとんどが頭部、胸部です。頭部、胸部を守ることがバイク事故で死亡する確率を下げる対策といえます。
以下は胸部プロテクターの着用有無による致死率のグラフです。着用なしの致死率は着用ありと比べると約1.5倍高く、胸部プロテクターの着用は致死率の低下につながることが分かります。
引用:「高速道路における二輪車乗車中のプロテクター着用状況別致死率比較(R1~R5合計)」警察庁
また、頭部損傷死者の39.3%がヘルメットの離脱が確認されています。しっかり着用できていないと頭部を守れないことが分かります。
引用:「二輪乗車中頭部損傷死者(ヘルメット着用あり)のヘルメット離脱の有無(R1~R5合計)」警察庁
事故の被害を軽減するには、ヘルメットだけでなく、致命傷に至る可能性が高い胸部へのプロテクター着用も必須です。また、ヘルメット着用時はあご紐をしっかり締めて、外れないようにしましょう。
バイク保険への加入の重要性
万が一、事故に遭い、ケガをしてしまった際に備え、バイク保険に入ることをおすすめします。強制保険である自賠責保険は相手の死亡、ケガに対する補償のみで、自分のケガへの補償はありません。
事故でケガをした際、相手からの賠償金だけでは補償が十分ではない可能性があります。たとえば、信号無視や一時停止違反など自分の過失割合が多いときは補償が少なくなります。
自賠責保険のみでは、治療費や休業中の収入などの実損額を賠償金でまかなえない可能性があります。
バイク保険に入っていれば、過失割合に関わらずケガに対する補償を受け取れる人身傷害保険を使うことで十分な補償を受けられます。また、弁護士特約を利用することで、相手からの賠償金の増額も期待できます。
ケガによる治療費や休業中の収入などへの補償を十分に受けたい人は、バイク保険への加入は必須といえるでしょう。
まとめ
本記事では、バイクの事故率と事故の原因、対策を解説しました。
バイク事故は自動車事故と比べて死亡する割合が高い傾向にあり、死者の多くは頭部や胸部を損傷したことが原因です。
また、バイク事故の多くは自動車との車両相互事故で、その中で右折時や出会い頭など交差点での事故が半数を占めています。
以上を踏まえて、バイク事故への対策として次の3つを意識するといいでしょう。
また、万が一、事故に遭ったときに備え、バイク保険への加入をおすすめします。
バイクは、事故で死亡または重傷を負う確率が高い乗り物です。安全運転と万が一の事故に備えた対策をするようにしましょう。
バイクの高い事故リスクが不安な方へ。バイク保険の加入がおすすめです。おすすめのバイク保険の比較はこちら