バイクが赤信号や渋滞時に、停車・減速している車両の間を縫うように通過する「すり抜け走行」は、事故のリスクが高いため、ドライバーだけでなく同乗者からも危険視されています。
それでも、「法に違反していなければ問題はないのでは?」と考える人もいます。この記事では、バイクのすり抜け走行が違反に該当するか、また起こりうる事故のリスクについて詳しく解説します。
この記事の要約
- バイクのすり抜け走行は法的には違反になりにくいが、事故のリスクが高い。
- 自動車の左折や車線変更時にバイクが巻き込まれる事故が多発する。
- 接触事故や誘発事故が起こる可能性があり、慎重な運転が求められる。
- 安全運転のため、不要なすり抜けは避け、正しい追い越し方法を守るべきである。
バイクのすり抜け走行とは?
バイクのすり抜けは、一部の人にとっては便利な方法に思えるかもしれませんが、実際には危険な行為とも言えます。バイクが車の間を縫って進む際、急に車が車線変更をしたり、ドアを開けたりする可能性があります。
これによって事故が発生するリスクが高まります。そのため、バイクのすり抜けは避けるべき行動とされているのです。一方で、渋滞時や信号待ちなどで停車している際、バイクがすり抜けることで、移動時間を短縮できるという利点もあります。
特に都市部などでは時間の節約が重要となることもあり、この点からもすり抜けは魅力的に映るかもしれません。しかし、安全を最優先に考えるならば、すり抜けは控えるべき行動と言えます。
道路交通法に基づくと、すり抜けは違法行為には該当しませんが、安全運転の観点からは慎重に行動することが求められます。
バイクのすり抜け走行は違反行為?
ここではバイクのすり抜け走行は違反行為なのかについて解説していきます。
すり抜け自体は違反になりづらい
バイクによるすり抜けは、一般的には違反とされないことが多いですが、その際にも注意が必要です。すり抜けを行う際には、周囲の状況や他の車両との間に適切な間隔を保ち、安全な速度で行うことが重要です。
特に、直進する車や停車中の車とのすり抜けでは、事故を防ぐためには慎重さが求められます。すり抜け走行はバイクの利点であるとともに、リスクも伴う行為です。そのため、安全運転を心掛けることが重要です。
違法であるかどうかは一概には言えませんが、他の道路利用者との共存を考え、安全かつ配慮のある運転を心がけることが大切です。バイクのすり抜け走行は、慎重かつ適切な判断を基準に行われるべき行為であり、安全な道路交通のためにも、常に周囲に気を配りながら運転することが求められるでしょう。
「追越し」は違反行為になりえる
違反行為につながる可能性があるケースは、正しい手順を踏まずに追越しを行った場合です。追越しとは、車線をまたいで前の車を追い越す行為を指します。この際、ウインカーを使って車線変更を行うことが必要です。
ウインカーを出さずに車線変更を行い、追越しをした場合は、適切な手順を踏んでいないことから、違反となる可能性があります。また、道路上の白色または黄色の実線は「はみ出し禁止」を示すため、これらのラインを超えて走行することも、違反に当たる可能性があります。
さらに、横断歩道手前などの追越し禁止区間でのすり抜けや、割り込み運転は、違反となる可能性があります。すり抜け自体は法的に問題ないが、違反要素が多いため、注意が必要です。
左側からのすり抜けは違反になる?
日本の道路交通法には「すり抜け」という行為そのものを禁止する規定はありません。ただし、すり抜けを行う際には他の交通ルールに従う必要があり、それを守らない場合には違反とみなされる可能性があります。
左側すり抜けが問題となる場合
左側からすり抜けを行う際、以下の点に注意が必要です
- 左側追い越しの禁止(違反の可能性あり)
道路交通法第30条では、「追い越し」は原則として右側から行う必要があるとされています。左側からのすり抜けが「追い越し」とみなされた場合、違反とされることがあります。
ただし、「追い抜き」(自車が速度を変えず、前の車を通り抜ける行為)として解釈される場合は違反にはなりません。状況による判断が重要です。
- 路側帯や歩道を走行する行為
すり抜けの際、路側帯(白線で区切られた歩行者用エリア)や歩道を走行することは違反です。これにより、以下の罰則が科される場合があります。
路側帯通行違反(2点減点、罰金6,000円程度)
- 安全運転義務違反の可能性
すり抜けを行った結果として事故やトラブルを引き起こした場合、道路交通法第70条に基づく「安全運転義務違反」に問われることがあります。
例えば、停車中の車が突然ドアを開けた場合や、歩行者と接触した場合などがあります。
具体例で考える
違反にならないケース
- 渋滞中、停車している車の横を低速で通り抜けた。
- 車両が信号待ちのため完全停止している場合。
違反になるケース
- 流れている車列の左側を高速度で追い抜いた。
- 左側のスペースが十分でない道路で無理にすり抜けた。
すり抜け自体は違反ではありませんが、左側すり抜けは状況次第で「左側追い越しの禁止」や「安全運転義務違反」に問われる可能性があります。
特に、歩道や路側帯を走行することは明確に違反です。
安全のため、十分なスペースを確保し、周囲の状況をよく確認した上で行動することが重要です。
バイクのすり抜け走行の事故リスク
ここからはバイクのすり抜け走行の事故リスクについて解説していきます。
自動車の左折に巻き込まれる
バイクと自動車の衝突では、特に自動車の左折時にバイクが巻き込まれるケースが目立ちます。バイクはサイズが小さく、運転手の視認性が低いため、時には見落とされてしまうことがあります。
特に、トラックなど大型車は視野が広く重量もあるため、バイクとの接触が致命的な結果を招くかもしれません。バイクは乗り手を完全に守る構造とは言えず、車両同士の事故で車の運転手が軽傷でも、バイクのライダーが命を落とすことも考えられます。
自動車を運転する際には、常に周囲を注視し、後方にバイクがいないか確認することが大切です。
ミラーなどの接触
すり抜け走行は、バイクや自転車が車両間を狭い隙間で移動する行為を指します。この行為では、僅かな体の揺れでも、バイクが車のミラーや他の部位に接触する可能性があります。接触が生じると、自動車のボディーが損傷したり、相手のミラーが壊れたりして、賠償責任を負う可能性もあります。
さらに、接触により転倒し、他の車に接触したり、乗り手がケガを負うリスクも考えられます。こうした損害が広がる危険があるため、すり抜け走行時には十分に警戒する必要があります。
このような接触事故が発生した際、現場を放置して逃げると、当て逃げの疑いが生じる可能性があります。当て逃げは免許停止や刑事罰の対象となることもあります。そのため、事故が発生した場合には迅速に現場での対処を行い、必要に応じて警察にも連絡することが重要です。
自動車事故を誘発する
すり抜け走行は、バイクが他の車両と接触せずに車線間を通過する行為を指します。しかし、自分のバイクが相手の自動車に接触していない場合でも、すり抜け走行によって加害者となることがあります。
また、誘因事故(非接触事故)では、加害者の行為が原因で被害者に被害が発生します。このような事故が起きた場合、加害者は損害賠償責任を負うことになります。弁護士に相談することで、適切な損害賠償を受けることができるため、事故の際には適切な対応を心がけることが重要です。
すり抜け走行で事故を起こさないためには?
ここではすり抜け走行で事故を起こさないためにどのようにすればいいのかについて紹介していきます。
不要なすり抜け走行は控える
すり抜け走行が必要な緊急のケースを除いて、無理なすり抜け走行は避けるべきです。リターンの少ない行為であり、安全を脅かす可能性が高いため、慎重に判断する必要があります。
法律を遵守しながら安全にすり抜け走行を行うことは容易ではなく、普通の走行よりも難しいと言えます。安全にすり抜けるために気を配っていても、事故が起こる可能性は完全に排除できないことを認識することが重要です。そのため、基本的にはすり抜け走行は避けるべき行為であると言えます。
交通安全の観点から、無理なすり抜け走行は避け、必要な場合でも慎重に行動することが重要です。自身の安全だけでなく、他の道路利用者の安全も考慮しつつ、ルールを守り、冷静な判断を心がけることが必要です。
正しい方法で追越す
追い越しは、前の車に追いつきそうな場合など、前方に進出する必要がある際、事故のリスクを軽減するためには、適切な方法で追い越すことが重要です。法的に正しい追い越しを行うためには、次のポイントに注意しましょう。
まず、右側から追い越すことが基本ですが、歩道がある場合や前の車両が右側によっている場合などは例外となります。追越したい前の車両との間隔をしっかりと開けることも重要です。さらに、ウインカーを付けて、追越しの意思を前後の車両に示すことで、周囲の車両に自分の行動を理解してもらうことができます。
追越し車線を長く走行せず、すみやかに追い越すことも大切です。これらの行動は、規則順守だけでなく、追い越しを安全に行うためにも重要です。周囲の状況が厳しいときには、無理をせずに安全を最優先にした運転を心がけましょう。
まとめ
バイクのすり抜け行為は、自動車同士の狭いスペースを通り抜けることが一般的であり、事故リスクが高いかなり危険な行為です。最悪の場合、ライダーが亡くなるような深刻な事故につながる可能性もあります。
直接的に接触事故を引き起こさなくても、すり抜け行為が他の車両の非接触事故を引き起こすことも考えられます。すり抜け行為自体、法的には違反とはされないことも少なくないため、危険な行為であってもなかなか取り締まられない現状があります。
違反ではないからといって、危険であることを理由にすり抜け行為を続けるライダーは多いです。ただし、法的問題がなくても、事故リスクがないわけではありません。自分だけでなく、周りの運転手やライダーも安心して走行できる環境を整えるためにも、すり抜け行為は控え、バイクを安全に運転しましょう。