「フードデリバリーを始めるには、任意保険は必須なのか?」
「バイクでフードデリバリーする場合、どんな任意保険がいいのか?」
バイクでUber Eatsや出前館などでフードデリバリーの仕事を始めようとしている人のなかには、上記のような疑問を持っている方もいるでしょう。
ほとんどのデリバリー会社では、任意保険への加入を必須としています。また、任意保険に加入する際は、「業務用」として使用できるかどうかの確認が必要です。
本記事では、フードデリバリーの仕事における任意保険の必要性と保険の選び方を解説します。バイクでフードデリバリーの仕事を始める予定の人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要約
- フードデリバリーを始める際、バイクの任意保険は必須である。
- 任意保険は業務用として使用できるか確認が必要。
- 対人・対物賠償保険は無制限に設定するのが望ましい。
- デリバリー会社によっては無償で保険を提供している場合もある。
フードデリバリーで任意保険は必要?
原付やバイクで配達する場合、任意保険への加入は必須です。デリバリー会社に登録する際、保険証券をはじめ任意保険に加入していることを証明する書類の提出を求められます。
また、万が一事故にあったとき、相手方への賠償責任を負ったり、自身のケガに対する治療費が生じたりする場合があります。賠償責任やケガによる損害が生じた際に備えるためにも、任意保険への加入は必要といえるでしょう。
強制保険である自賠責保険のみの場合、相手方への補償が不十分なうえ、自身のケガに対する補償はありません。したがって、場合によっては、損害のほとんどを自己資金でまかなわなければなりません。
任意保険への加入は、デリバリー会社の登録要件として必須なだけでなく、自身の身を守るうえでも必要です。
任意保険の選び方
バイクの任意保険を探すときは、以下の点に注意して選びましょう。
対人・対物補償保険の保険金
対人・対物賠償責任保険の保険金は、万が一の事故に備えて無制限に設定したほうがいいでしょう。
過去の判例をみると、相手方を死亡、ケガさせた場合は5億円以上の多額の賠償金が認められているケースもあります。
交通事故高額賠償判決例(人身事故)
認定損害額 | 性別・年齢 | 職業 | 損害 | 裁判所 | 判決年月日 |
---|---|---|---|---|---|
5億2,853万円 | 男性・41歳 | 医師 | 死亡 | 横浜地裁 | 2009年12月27日 |
4億5,381万円 | 男性・30歳 | 公務員 | 後遺障害 | 札幌地裁 | 2009年1月7日 |
3億8,281万円; | 男性・29歳 | 会社員 | 後遺障害 | 名古屋地裁 | 1998年5月18日 |
出典:自動車保険の概況(2021年度統計)|損害保険料算出機構
また、店舗や商品など相手の財産に損害を与えたときも同様に多額の賠償金を請求される恐れがあります。
交通事故高額賠償判決例(物損事故)
認定総損害額 | 被害物件 | 裁判所 | 判決年月日 |
2億6,135万円 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) | 神戸地裁 | 1994年7月19日 |
1億3,450万円 | 店舗(パチンコ店) | 東京地裁 | 1996年7月17日 |
1億2,036万円 | 電車・線路・家屋 | 福岡地裁 | 1980年7月18日 |
出典:自動車保険の概況(2021年度統計)|損害保険料算出機構
自賠責保険の保険金額は、相手方が死亡した場合は3,000万円、後遺障害が生じた場合は75〜4,000万円、ケガを負った場合は120万円です。なお、物に損害を与えた場合の補償はありません。上記のような賠償額を請求された際は、自賠責保険の保険金のみではまかなえません。
対人・対物補償の保険金額は、無制限にしたほうが無難といえます。
人身傷害保険の保険金・種類
人身傷害保険は、事故により死亡やケガをした場合に補償を受けられる保険です。治療費や仕事ができないことで減った収入などの実損額が補償されます。
原付・二輪車の任意保険の契約をしている人の約7割は、保険金を3,000万円までと設定しています。実際に設定するときは、自身の年収や扶養家族の有無などを考慮するといいでしょう。
参考:自動車保険の概況(2021年度統計)|損害保険料算出機構
人身傷害保険には「車内+車外補償」と「車内のみ補償」の2種類があり、補償の範囲が異なります。
「車内+車外補償」は、契約しているバイクに搭乗中の事故だけでなく、他のバイクに搭乗中の事故や歩行中に車やバイクにひかれた場合も補償されます。
一方、「車内のみ補償」の補償範囲は、契約しているバイクに搭乗中の事故のみです。その分、保険料は「車内+車外補償」と比べて安くなります。
自身の年収や家族構成などの状況を踏まえて、保険を選ぶようにしましょう。
使用目的
バイクの任意保険の使用目的には、日常・レジャー用、通勤・通学用、業務用の3種類があります。フードデリバリーをはじめとした配送業務のためにバイクを使用する際は、業務用を選択しましょう。
なお、保険会社によっては、業務に使用する場合は契約できないケースもあるので注意が必要です。
業務用として使う場合、バイクの運転時間や走行距離が長くなりがちです。そのぶん、事故にあう可能性も高くなるので保険料は他の使用目的より高くなります。
ただし、保険料が高いからといって、使用目的を偽って申告しないようにしましょう。本来とは異なる使用目的を申告して契約した場合、「告知義務違反」で保険金が支払われないことがあります。
ファミリーバイク特約も使用できる
原付を使ってフードデリバリーをする場合、業務中もファミリーバイク特約の補償対象です。
ファミリーバイク特約は、通常のバイクの任意保険に加入する場合と比べて、保険料が割安です。また、対人・対物賠償保険の保険金は、自動車保険で設定されている保険金と同額です。
自身または家族が自動車保険に加入している場合、ファミリーバイク特約の利用を検討するといいでしょう。業務中の事故でも通常の任意保険と同等の補償を受けられるうえに、保険料を抑えられます。
デリバリー会社が提供する保険
デリバリー会社に配達員登録をすることで、無償で保険を提供してくれる会社もあります。バイクの任意保険に補償内容を上乗せして利用が可能です。
デリバリー会社が提供する保険の補償内容には、対人・対物賠償責任保険と傷害補償の2つがあります。
対人・対物賠償責任保険は、車両に乗っていないときは、第三者にケガを負わせた際の賠償責任を補償します。なお、移動中に発生した事故には、バイク保険として適用可能です。
傷害補償は、事故にあい、死亡、後遺障害が生じたとき、ケガによる治療、入院が生じたときに見舞金が支給されます。
ただし、適用範囲は配達中(配達リクエストを受けてから配達完了またはキャンセルするまでの間)に限定されます。配達リクエストを受けていないときに起こした事故は補償の対象外になるので注意しましょう。
まとめ
本記事では、Uber Eatsや出前館などでフードデリバリーを始める際の、バイクの任意保険の必要性と選び方を解説しました。
任意保険への加入は、デリバリー会社への登録に必要なだけでなく、事故を起こしたときの相手方への高額な賠償責任に備えるためにも必要です。
バイクの任意保険の中には、業務使用する場合は契約を断られるケースもあります。保険を選ぶときは、業務使用が可能かどうか保険会社に問い合わせをしましょう。